院長コラム

エネルギーチャージ

こんにちは🍂
秋の空が気持ち良く、清澄な空気の朝。
通勤中にパチリ。
かなしいことがあったおやすみだったので、エネルギーチャージのために連休最終日は秋を見つけに出かけてきました。
どこまでも広がる雄大な景色をぼーっと見て、風を感じて、またがんばる力をチャージしました✊🏻

今日の投稿は、センシティブで重い内容を含みます。妊娠初期など時期的に自衛した方がいい方は、読み飛ばしてくださいね。

りゅうざん
この仕事をしていて、最も、と言ってもいいくらい過酷な辛いできごとです。
赤ちゃんを望む方にとって、安堵したり喜んだり、具体的な未来を想像したあとに、辛い事実をお話することは本当に苦しい。
妊娠した赤ちゃんが産まれてくるのかどうか、は、神の領域であり、医学ではどうしようもないことが多くあります。
ただ、辛いことのなかに、確かに宿ってくれた小さな小さないのちが何かを教えてくれるかもしれない。
わたしは医師(=科学を専門にする者)なので、流産に対するスピリチュアルな考えは苦手だけど、正しい医学の知識で苦しい人を導きたい、そう思っています。
(もしかしたら、余計なことを言われて自分を責めたり傷ついているひとたちがいるかもしれないから)
そして、暗闇で溺れそうになっている方たちの手をしっかりと繋いでいたい。

今日ご紹介する卒業エピソードは、そんな辛い思いを5回された方です。
『わたしの体験が誰かの力になるのなら』と言ってくださいました。
現在41歳。
38歳で結婚後妊活を始め、3回自然妊娠されましたが、3回流産。愛育病院で3回目は絨毛染色体検査を行い、染色体異常の流産。
不育症リスク因子の血液検査では、軽度の甲状腺機能異常のみでした。
39歳で愛育病院からクリニックに紹介。
AMHは4.86と高い方でした。
4回の人工授精で妊娠せず、40歳になることもあり、体外受精にステップアップ。3個胚盤胞凍結し、凍結胚移植で妊娠しましたが、流産。この子も染色体異常でした🥲
2回目の2個移植も胎嚢のみで育たず。
年齢に伴う受精卵の染色体異常が流産の原因のため、着床前診断(PGT-A)をすすめました。ご夫婦おふたりの染色体は正常で、きっといつかは授かる!と信じました。
PGT-A目的で採卵を2回行い、計3個のグレードの良い胚盤胞を検査に出せましたが、全て流産するか着床しないと考えられる胚でした。かなりの高額の採卵と検査の末に、この結果が出た時はさすがに心が折れそうでした。
ご夫婦と何度か話し合い、グレードはやや下がりますがPGT-Aに出せなかった胚盤胞(4ACと4BC)を2個移植してみることにして、単胎妊娠😭👏毎回の診察でわたしも患者さんもドキドキ不安でしたが、今度こそ順調に育ち、涙の卒業になりました。
PGT-Aをした中に運命の子を見つけることはできませんでしたが、しなければあと何回か流産したかもしれません。これ以上の辛い思いを回避できたのは、PGT-Aのおかげだと思っています。

卒業して愛育病院にやっと帰った日。主治医の儀保晶子先生が、『おかえり😌待ってたよ』と優しい言葉で迎えてくれたそうです。わたしも涙が出ました。
どうか神様。元気な産声を聞かせてあげられますように。

どうにかできること。どうにもならないこと。祈ることしかできないこと。医学の限界。医学のチカラ。
苦しいこともあるけど、辛い思いを抱えた方たちと一緒に歩いていけますように。

2022/10/11 インスタ投稿より